ストーリー

#1 「Blind Bullet」の悪夢

Aug.28.2011.
実験体達の脱走事件が起き、「Blind Bullet」作戦から数か月が経過した。
DERBARANの実験室から始まって主要都市に逃れた実験体らはDST(Derbaran Special Tactics, DERBARAN特殊戦術部隊)の活躍で全て抹殺されてしまった。
いや…あたかもそうであるかの様に見えた。

黒死病(Plague, PestまたはBlack Death)、過去14世紀中期にネズミやノミなどを通じて拡大し、約2千万人を殺した病気だ。
黒死病は伝染性が強い上に、高い致死性を兼ね備えている。
21世紀でも黒死病は依然として残っており、アフリカのような治療法が広く普及してない地域では死ぬしかない死の病気である。

黒死病の原因はバクテリア。バクテリア菌の一種であるペスト菌によって大勢の人々が消えていく。

以前の市街地戦闘─作戦名「Broken Sunset」で採取したクラッシャーの死体からサンプルを獲得し分析を行ったが、そのサンプルが示した途方もない伝染性と、その感染により死亡した人数は、14世紀のペストが流行した過去の恐怖を再び浮かび上がらせた。

image DERBARAN第3研究所と第1研究所では実験体の実験を、第2研究所では実験体の進化と知能発達について研究してきた。
第2研究所は伝染性と風土病の流布に対抗する為に、実験体を通じて抗体を作る研究所を立ち上げた。

研究レポートによると、ある要因によって普通の人間が実験体に変化してしまうという結果が出ている。
そのある要因とは、我々が今までテレビ等で見てきたゾンビ、或いは映画の様に何らかの接触から感染するのではない。まるで伝染病の様にその地域に滞在しているだけで感染してしまうものであった。
第3研究所はこの危険性について予測をしていた事があった。それはチャリオットの製造に取り掛かり始めた時の事だった。

チャリオットは他の実験体とは異なり、凄まじい破壊力を持っている。何故なら特殊な製造方法により、骨格と筋肉の急速的な発達と強大化を引き起こしたからである。
また試作体として最初に造られたチャリオットは、実験体らのリーダーとして飼い慣らす為に、科学者達に数多くの調節を施された。
まるでオランウータンやゴリラのように、知能ではなく力が強い個体が群を率いるような動物達の攻撃性と若干の知能を利用して、今後の戦闘に活用するためであった。

image しかし、その期待は長く続かず水の泡となってしまった。それはチャリオットの攻撃的本能が残虐性を帯びて来てしまった為である。
正常発達と群れでの社交性を導く為に同じ実験棟で育まれた実験体らを全て引きちぎって凄惨に虐殺してしまったのだ。
結局、実験体のみならず科学者達の安全の為に、最初のチャリオットであった奴は、実験棟と共に火に焼かれて死んだ。

大火事にも関わらずウイルスによって強化された肉体は焼け残り、第3研究所の科学者達は死体より採取したウイルスから狂暴性を発現させる因子を分離させ、その後同じような事が起きないよう、抗暴力性ワクチンを開発した。

暴力性ウイルスの名称はW(Violent Virus)とし、これに対抗するために開発された抗暴力性ワクチンはAW(Anti-Violent Vaccine)と命名された。

#2 裂けた夕焼け,「Broken Sunset」

Sep.21.2011,19:08
俺の名前はマーク・ルシエール(Mark Lushier)、エリオスで民間警察に勤めている。
エリオスはアングレン北部の小都市で、飛行場があり貿易の窓口として機能している。
またアングレンと近くの都心部では比較的裕福な生活を営んでいる者が多く、主に貿易業を生業とするビジネスマンがこの都市に集まっている。
しかし貿易業だけの稼ぎでこの都市で食べていくのは難しい…、軍事物品の密売取引を除けば…。

image この間、市街地にある病院にヘリが墜落したとの報道がニュースで流れていた。その物凄まじい現場を見て、他人事とは思えないほど驚かずにはいられなかった。

テレビ画面を埋め尽くしたヘリはCH47 Chinook─ボーイング(Boeing)にM&Aされたボーイングバートル(Boeing Vertol)が作成した重量級輸送用ヘリだった。
通常、軍事作戦などで使用されると言われる物が、こんな風にニュースで流れる事には嫌な違和感を覚える。

「幸いにもエントランスに墜落した為、病院側の死傷者は居ないと言っているが、大体軍用機が墜落とか信じられん。寝ぼけでもしてたんじゃないのか。」
俺はそんなことを思いながらTVを見ていたが、ニュースでは墜落の衝撃で死人の口みたいに開いているヘリの口の中に、何が入っているかに関しては言及しなかった。
「軍事ヘリだから多分食糧とか武器みたいなものだったんだろう。まぁ、俺の知ったこっちゃねえな。」

Oct.3.2011,06:50
アングレン北部地方、小都市エリオス28番街

image この場所はもう地上の都市ではない。
なぜか皆狂ってやがる…。
なんでニュースではこの事態を報道しないのか。
雑音だらけでよく聞こえないラジオでは周辺に見える動物に最大限注意を払え、とだけ言っている。

動物?動物のせいでこの有様になったのか?あんな事が起こった日から、街は狂った奴らで一杯だ!
神様、お願いです!この悪夢から目を覚まさせてください!!

Oct.4.2011,07:30
DERBARAN自治区内 DST(Derbaran Special Tactics,デルバラン特殊戦術部隊)小会議室

ダットスコープが付いているM202の弾頭挿入口を擦りながら男が低い声で小さく口を開いた。
「そうか、ではサンプルの行方が分かったんだな。」
呆れたように女が答える。
「分かったというより、そもそもそこにずっとあったからね。彼らが発見出来なかっただけなんだけど。」
M202の男が話しながら立ち上がると、先程小さな声で話した男の背とは思えないくらいの巨大な人だった。

image 名前はハッサン(Has-san).本名であるかは不明だ。
確実なのはDST内Alphaチームのリーダーである事だ。
アゼルバイジャン出身の黒人でSAS(英国の特殊部隊)に志願していた為、実戦経験が多い。

「ハッサンと私以外に他のやつは必要なの?」
革のジャケットを着て軍靴を履いている彼女の名はベロニカ(Veronica)、やはり本名であるかは不明だ。
アルゼンチン出身でドレットヘアと浅黒い肌は彼女の強靭さを表すには十分である。

ハッサンはつばを飲み込んでいるのか息を整えてから
「頑強なやつが必要だ。俺としては自分の身くらい守れるってんなら、それで十分だ。」
と口を開けた。
地図を開くと、作戦名「Blind Bullet」と「Broken Sunset」の位置が赤く記された。
「こことここが根源地だ。んで…サンプルはおそらくこの周辺にあるはずだ。奴等が気付く前に…。」

彼らが言っているサンプルは正にAWだった。
実はDSTが「Broken Sunset」の作戦に導入されたのは、AWが開発され持続的な効果改善に対する実証を元に、チヌークで実験体達を輸送中に撃墜された為だ。
ベロニカは地図に記された「Broken Sunset」を人差し指で擦りながら目を細く開けた。
「問題は…生き残っている奴らね。」

─ AW(抗暴力性ワクチン、Anti-Violent Vaccine).
AWはワクチンであるが、実はカプセルや液体、あるいはそれに類する形態で保存するのは不可能である。
AWを培養するか保存しようとすると、摂氏37~38度の温度で保存しなければならないが、この温度に合う保存媒体が無いからである。
それで、第3研究所の科学者たちが選択した方法が「生体運搬」だった。
研究所の実験ノートに記載された生体運搬方法は大体次のようだ。

・万が一の暴走を予防する為、運動能力をなくすようにNeuron(ニューロン:神経系の構造的・機能的単位の神経細胞)を除去した実験体の細胞の中でAWを培養させる。
・培養されたAWは実験体の新陳代謝によって培養されるので、生命維持活動に最適な条件下で扱わなければならない。

「つまり、もし今回の作戦で実験体が死んだらAWの回収も水の泡になるということね。じゃ、行って無事に連れて帰って来たらいいのよね?」
ベロニカが簡単じゃないという風に笑いながら肩を振った。

しかし、ハッサンは首を傾いだ。
「問題はそこじゃない。AWは差し詰めフェロモンみたいなもんだ。」
「何?それじゃ、盛った実験体たちがサンプルを奪おうとでもするっていうこと?」
ハッサンはベロニカが理解してくれて気持ちがいいというように笑いながら
「そういうことだ。WはAWに磁気のように引き込まれるようになっているんだとさ。」
ベロニカは静かに息を吐き出して両手を組みながら壁に寄り掛かった。

そして─、暮れていく夕焼けを見ながらゆっくりと口を開けた。
「今日の夕焼けは特別にキレイね。…それで、私達が向かう先はどこ?」
ハッサンはカサカサとしたあごの髭を親指で楽しんでいるようにいじりながら口を開いた。
「…エリオス28番街。」

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